前回の続きです。
ブラック企業への入社初日、
入社式からの新卒研修いきなりブラック洗礼を受けた菅生(すごう)。
しかし、それはこれから始まる新卒研修のほんの入り口に過ぎませんでした・・・
今回の記事では、入社から1か月の出来事、
新入社員の全体研修に係る内容のお話になります。
入社1か月目、地獄の新入社員研修
全員いるか?お前から左に向かって点呼。
1,2,3,4…
朝8時半。
社員寮の1Fにて全員集まり、出発の準備をします。
大卒(男)は菅生含めて5人しかいないのでともかく、
高卒(坊主)は21人もいるので、まとめるだけでも一苦労。
必然的に、年上の菅生たち大卒がまとめ役になり、
冒頭のように、点呼をとり全員揃っているか確認します。
菅生さん、一人いません。
ん?まだ寝てんの?
いえ、2階でクソしてるみたいです。
これから1か月間に及び全体研修が続きますが、
こんなことは日常茶飯事です。
すいませ~ん遅れました~!
2階でクソしてた高卒がドタバタと階段を駆け下りてきます。
流す音が聞こえなかった気がしますが、まぁ気のせいでしょう。
全員揃ったので、研修会場という名の地獄に向かい出発します。
社会人の第一歩、早朝のホテルで怒声を出す研修
時刻は朝9時
研修会場は本社近くのホテルの会議室です。
会場に着くと、
既に女性陣と総務人事課長が到着していました。
座席表を渡され、指定の通りに座ります。
ちなみに菅生は最前列の角という嫌な予感がする位置。
座席はA~F班の6グループに分かれるように配置されており、
菅生はA班の班長でした。やっぱりなんか嫌な予感がする。
全員が座席に着き終わるころ、時刻は9時半。
教官が研修会場入りします。
おはようございます。
・・・
・・・
・・・?
お前ら、寝てんのか?
いやどう見ても起きてるだろ、
と言いたいところですが、
そんなことも言えず全員教官の言葉を待ちます。
お前らが今やったのは挨拶じゃない。ただの独り言だ。来店したお客様に対して、ブツブツ独り言をかます奴がいたら失礼だろうが。そう思わないか?総務人事課長。
おっしゃる通りですね。
誤解の無いように補足しますが、
先ほど菅生たちが教官にあいさつした際、
総務人事課長はおはようございますすら言っていませんでした。
客に独り言をかますくらいなら、無言の方が良いのかもしれません。
まぁ・・・お前らはまだ入社したばかりの新人だから仕方ない。まずはお前ら、これを覚えろ。
そう言いながら、教官がホワイトボードに書き込んでいきます。
- いらっしゃいませ、こんにちは
- かしこまりました
- 恐れ入ります
- 失礼します
- 申し訳ありません
- お待たせいたしました
- また、おこしくださいませ
いいか、これは接客業を行う上で絶対に覚えなければならない言葉だ。全員頭に刷り込んでおけ。そしてこの言葉を、さっきみたいにボソボソせず、はっきりと言う。これは基本中の基本だ。
このような説明を行った教官。
ありがたいことに、まずは教官が見本を見せてくれることになりました。
いいかお前ら。お客様のお耳にしっかり届くように、胸を張って、自身を持って、ハキハキと発言することを意識しろ。こんな風にな・・・!
いらっしゃいませぇ!!こんにちはぁぁぁ!!!
かしこまりましたぁ!!!
恐れ入りまぁぁぁす!!!
念のため繰り返します、
時間は朝9時半、
場所は本社近くのホテルの会議室です。
朝のホテルの会議室、
おそらく他の宿泊客もいるであろうホテルの中で、
ハキハキとした教官の怒声が響きます。
ていうかお客様にこんな怒声浴びせたら、クレーム間違いなしだと思うのは菅生だけ?
どうだお前ら。いかにさっきのお前らのあいさつが頼りないかわかっただろう。
そりゃ今のに比べればね。
むしろ、そんな怒声出してまで頼られたくないです。
それではお前らもやってみろ。一人が前に立って、いま私がやったように声を出す。他の奴らはそれに続いて、全員で声を出せ。
堂々と完璧な手本を見せご満悦な教官、
今度はお前らがやってみろ言い出しました。
まぁ、何となくこの展開は読めましたが。
さて・・・前に立つ役は誰にするか。申し訳ないが私はまだお前らの顔と名前が一致していない。総務人事課長、適任者はどいつだ?
え?あぁ、まぁ・・・じゃあA班の班長、菅生がやれば?
嫌な予感は的中しました。
しかも、教官は「適任者」を聞いたにも関わらず、
A班の班長というテキトーすぎる理由で菅生に白羽の矢が立ちました。
というかほんと、まともに仕事したことあんのかこの総務人事課長。
昔、クラスメイトで青柳くんという人がいたのですが、
小・中・高の9年間、栄光の出席番号1番の座を譲らなかったらしく、
クラス替え直後などの際、1番という理由で先生に指されることが多かったそう。
当時は「1番かっこい~」とか思ってましたが、青柳くんごめんなさい。
よし、お前が菅生だな・・・さぁやってみろ。他の奴らは菅生の後に続け。
まったく気乗りしませんが、
この状況ではもうやるしかありません。
宿泊客に迷惑です、なんて口にしようものなら、
さっきの怒声以上の怒号が響くことでしょう。
大きく息を吸い、菅生渾身の一撃をお見舞いします。
いらっしゃいませ!こんにちは!
いらっしゃいませ!こんにちは!
かしこまりました!
かしこまりました!
軽く息を切らしつつも、
先ほど教官がボードに書いた7つの挨拶を言い終えました。
菅生+新卒39人分の大声の挨拶、教官も文句なしでしょう。
ところが
30点だな。
!!???
ブログでは伝わりにくいですが、相当の声量が出ていました。
それも当然です。だって18~22歳の若いやつらが、40人で声出したんだから。
しかし、教官の評価を頂くことはできませんでした。
それもそのはず、何せ教官の評価を得るためには、
以下のようなポイントが必要だったからです。
さっきよりは良くなった。しかしお前ら、いまの自分たちの声を振り返ってみろ。空気は震えたか?床や壁は揺れたか?先ほどの私の声との大きな違いはそこだ。空気が震えないようではお客様の心も震えない。お客様の気持ちを第一に考えろ。
いやあんたの声も空気は震えてない。
てか、3.11の直後で床や壁が揺れてたまるか。
そんなことしたら、お客様の心は恐怖で震えるわ。
もはや売れっ子ロックバンドばりにリピートを求める教官。
怒声を出す研修はこのあとしばらく続き、そして毎朝、研修開始前のお決まりになるのでした。
怒声の次に教わるのは、社長の口癖と、その耐性付け
この会社で仕事をする上で、最も重要なことが何かわかるか?
教官の唐突な質問。
これは比較的優しい問題、
というか先ほどから教官自身が口にしていましたので、
挙手して一人の高卒が答えます。
はい、お客様の気持ちを第一に行動することです。
そうですね、教官もさっきからそう言っていました。
100点ではないかもしれませんが、いい回答に違いありません。
ところが。
違う。
えっ・・・?
戸惑う高卒。
さっきの怒声は何だったのと言わんばかりです。
私はコレを教えるためにここにいると言っても過言ではない。いいかお前ら、この会社で働く上で最も大事なことは、社長からの激を受け止め、そして耐えることだ。
教官は少しオブラートに包んで表現していますが、
要するに社長からのパワハラに耐えることが最も重要とのことでした。
そして、この会社を生き抜くための最良の方法を教官が教えてくれます。
この会社には社長語録というものがある。お前ら、それを完璧に記憶しろ。そして口に出して、音として覚えろ。そうすることにより、耳に抗体ができて、いざ社長に言われた時の耐性となる。
これが本当に新卒研修なのかと耳を疑います。
それとも、菅生はまだ耳に抗体ができていないせいでしょうか?
新卒研修って、名刺交換とかビジネスマナーを学ぶものかと思っていましたが、
まさかの社長の言葉を覚えろとの指示。
しかも、覚える言葉は、
よくある有名な経営者の名言といった類ではなく、パワハラまがいの暴言。
社長語録ですが、一部を抜粋すると以下のようなものがあります。
~ありがたきお言葉~
社長語録(一部抜粋)
- 遅ぇんだよ!早くやれ!
→普通以上のスピードで仕事しても言われる言葉。
おそらく社長の「早く」は音速レベル。
- てめぇの身銭切れんのか!
→米一粒でも落としたら言われるセリフ。
会社の金じゃなくてめぇの給料で仕入れてると思え!とのこと。
ちなみに実際、給料から材料費などを引かれるのは珍しくない。
- 口で言ってわからねぇなら身体で覚えろや!
→ぶっ飛ば自主規制
特定を防ぐために少し表現を変えていますが、
要するにこういったパワハラまがいの暴言集が存在し、
これらの言葉に慣れなければA社で長く働くことはできません。
いいな。これらの言葉を覚えて、そして耐えろ。そのために、先ほどの挨拶同様、社長語録を力の限り声に出せ。さぁ菅生、前に出ろ。
え、また俺?
しかも、まさかこの暴言を叫ぶの?
さっきの挨拶ならまだともかく。
現時点で、教官の中で顔と名前が一致しているのはどうやら菅生のみ、
どうやら今日一日嫌な役回りになりそうです。
断るわけにもいかず、腹を決めて前に出ます。
そして先ほどの挨拶同様、渾身の力を込めて
遅ぇんだよ!早くやれ!
遅ぇんだよ!早くやれ!
てめぇの身銭切れんのか!
てめぇの身銭切れんのか!
もう異様な光景です。
朝のホテルで、大声で罵り合う新卒一同。
しかも、菅生は前に出ている関係で、
他の39人の新卒たちと向かい合っています。
言い換えれば1人vs39人、39人分の罵声を浴びる菅生。
俺、そんなに怒られるようなことしたかな?
先ほどの挨拶と同様に、
この暴言を叫ぶことも、毎朝のお決まりでした。
近隣住民の皆様、お願いですから110番通報して下さい。
儚く散る本社勤務の希望
4月のスケジュール表を配るから目を通すように。
教官による怒声研修がひと段落したタイミングで、
総務人事課長から4月のスケジュールを配られました。
スケジュール表を見ると、4月の出勤日は全て研修。
入社一か月なのでそれは当然ですが、問題はその中身。
研修内容は、今日のような怒声研修と、
店舗勤務を前提としたロールプレイが主です。
少なくとも菅生には疑問がありました。
本社勤務で必要な研修は無いの?と。
高卒の子たちがどうだったかわかりませんが、
菅生たち大卒は本社勤務の幹部候補生として内定をいただいているので、
最初の研修はともかく、配属は本社のはずだと思っていました。
本社勤務であれば、
名刺交換や電話対応、ビジネスメールなど、
店舗とは異なる研修が必要なはずです。
ところが、4月のスケジュールには店舗に出る前提の研修のみ。
本社研修は、5月以降なのでしょうか?
そんな中、大卒の中で一人、勇者が現れます。
あの・・・私たち(大卒)は本社勤務と聞いていたのですが、いつから本社配属になるのでしょうか?
配属がどうなるか私にはわからんが、少なくとも本社勤務は無いと思え。
え・・・?
この会社では全員が一丸となって店を盛り上げ、お客様に満足していただく。つまり、本社勤務になったとしてもだ、兼務でどこかの店舗には行ってもらう。
そ、そんな・・・
ちなみにそこにいる総務人事課長も、18時くらいからは店舗に出てもらっている。まぁ今は君たちの研修のため、出ないことも多いが。なぁ、総務人事課長。
・・・
ちなみに入社前、総務人事課長は自身のことを本社勤務と言い、
店のことはよくわからないと言っていたのですが、大嘘だったようです。
本社勤務の人たちは9時から本社へ出社していますので、
定時は9-17半くらいのはずです。
それなのに、18時から店舗に出るということは、
必然的に労働時間は短くて12時間ほどということになります。
流石、重要なことを後だしすることに定評がある総務人事課長、
どうやらこの記事でも先に言えよと書かざるを得ないようです。
こうして菅生たちの本社勤務の希望は断たれ、
冬のアルバイト時代と同じ仕事をすることが決定したのでした。
昼休みのランチでチェーン店に行くのは禁止
そろそろ昼休みだな・・・各班ごとにまとまって昼メシに行ってくるように。その際に、一つ注意点があるので伝えておく。
昼メシの注意点?
ちゃんと時間通りに戻ってくるように、とか
食べ過ぎると午後眠くなるのでほどほどに、とかでしょうか。
と思いきや、ちょっと予想の斜め上の理由でした。
全員、昼メシは最低でも1,000円程度の価格の店に行くように。良い店で、美味い料理を食し、上質なサービスを受けることで、接客業として自分がどういう存在であるべきか、その肌で感じて来い。そのためには、安い店はだめだ。チェーン店など論外だ。いいな。これから毎日、昼メシはどこで何を食べたか記録し、感想文を書け。各班長は感想文をまとめて私に提出するように。
言いたいことはわかりますが、
チェーン店をディスるのはちょっと言い過ぎです。
確かに高級店に行くと、
明らかに料理は美味いし、何より接客サービスの質が違うこと、それは今ならよくわかります。
ただ、だからと言って安い店がダメとは思いません。安い店にも、それ特有の良さがあります。
何より、お客様に怒声を浴びせるA社のクオリティでそれを言ってはいけません。
しかし感想文まで出せと言われると、
おいそれとチェーン店に行けません。A班の連中を引き連れ、
毎日それなりの価格の店で昼メシを食うことになりました。
しかし、まだ社会に出たばかりの新卒にとって毎日ランチに1,000円は痛い・・・
というか、世の中でがんばるお父さん世代でもランチに1,000円はまあまあ豪華なんじゃないか・・・?
加えて厄介だったのが、A班メンバーの主張。
A班の顔ぶれは、
- 高卒(男)だけどしっかりした副班長
- 巨漢でおおらかな高卒(男)
- ちょっといかつい関西弁高卒(男)
- 唯一無害な高卒(男)
- 不思議系天然の高卒(女)
- 入社初日からキスマークをつけてきた大卒(女)
など、なぜか他の班よりもアクの強い面々。
ランチの時に限った話では無いですが、
こいつらがもう言いたい放題言ってきます。
菅生さ~ん!俺いっぱい食うから高い店なんて行ったら破産するよ~!
この機に少し痩せたらいいやないか!
す、菅生さん・・・もうお金がありません・・・
あっ・・・あぅ・・・
ちょっと修くん、頼んなさすぎ!
修さん!もっとこいつらに強く言わなきゃ!
(はぁ・・・疲れる・・・)
これまで菅生は、
グループリーダー的な立場を経験したことはありましたが、
このA班をまとめるのは本当に苦労しました。
もっとも、人同士のかかわりはブラック企業とは関係なく、
例えホワイト企業に入社しててもついて回る話なのでしょう。
ですので、A班の苦労の話は省きますが、
ぶっちゃけこの研修期間、A社のブラックぶりよりも、
A班のブラックぶりの方がはるかに大変でした。
まぁ、いまとなってはA班と共にした時間が懐かしいです・・・
休日の行動も報告義務を課せられる
4月のスケジュール表を見ると、休日日数は11日。
ブラック臭が半端じゃなかったですが、意外と多いです。
毎日の研修の拘束時間が12時間超えが当たり前だったり、
11日の休日は全て1休で2連休は無かったりと、
怪しげな兆候はありますけどね。
お前ら、新人の分際で11日も休みをもらえることをありがたく思え。
私が新人の頃は休みなんて無かったからな、お前らは本当に恵まれている。
「自分が若い頃は~」「自分はこうだった~」
という表現はブラック企業の特徴の一つですが、
見事に出てしまいました。
いいか、うちの会社では「仕事の中に遊びがあり、遊びの中に仕事がある」という考え方を是とする。なので、休みだからと言って、ただ休むだけではいかん。休日の中でも、仕事に活かせるような発見があるはずだ。そのような意識をもって休日に臨むことで、自身の仕事をより良いものにできる。だからお前ら、休みの日に何をしたかレポートを出すように。
「仕事の中に遊びがあり、遊びの中に仕事がある」
ブラック発言の次は、意識高い系発言が来ました。
そして、休日も仕事のことを考え、
挙句に休日の行動を報告せよというブラック発言に戻るという。
教官も一人二役で忙しいですね。
社会人なりたてで、連日のようにブラック洗礼を受けてしまい、
当然のように新卒一同疲れ切っています。
そんな中、1休とは言え休日は貴重な羽休め、なのになんだか監視されている感覚。
研修期間は、この休日の報告は欠かさずに義務付けられました。
唯一の救い、同期との楽しい寮生活
はぁ~疲れた。
研修は朝9時からだいたい20~21時まで、
寮に着くころには22時近くになっていることがザラでした。
帰るなり菅生たち大卒は2階に直行します。
階段を上がると、なんだか異臭が。
何事か、と思いましたが、すぐ解決しました。
今朝、ドタバタと下りてきた高卒がクソを流し忘れていました。
流す音が聞こえないなと思いましたが、やっぱりね。
頼むからクソくらい流してくれ。
疲れた体を癒すため、まず風呂に向かいます。
風呂は小さめの銭湯といった具合で、大人10人で入っても余裕の広さ。
せっかくなので大卒5人で入ろうということになりました。
汚れと一緒に今日の疲れを落とすぞ~、とまずはシャワーを浴びようとすると、
なぜか冷水or熱湯しか出ない
普通、風呂場って40℃弱のお湯が出るじゃないですか、快適なあの温度のお湯が。
それなのになぜか、このシャワーからは冷水か熱湯しか出ず、
身体にかけるたびにあっちぃ!&つめてぇ!の繰り返しでした。
そんな大卒の声を聞きつけてか、
A班の巨漢が地下(風呂場)まで下りてきました。
そして、
菅生さん、その風呂壊れてますよ~。
巨漢よ、先に言ってくれ。
総務人事課長の真似はいかんぞ。
高卒たちが誰一人風呂に入ろうとしないなと不思議に思っていましたが、
既にこの寮に住み始めて1週間ほど経つ高卒たちは、
風呂が壊れていることを知っている為でした。
ていうか強制的に寮生活を強いておいて、
風呂は壊れているって、せめて水回りくらいはしっかりしとけよ!
これで寮費(大卒は家賃)の負担があるのだから、A社の管理能力の無さがうかがえます。
え、じゃあ君ら風呂はどうしてんの?
近くに銭湯があるので、みんなそこに行ってます。せっかくなので一緒に行きましょう~。
どうやら寮の近くには銭湯施設がいくつかあるようで、
ここ1週間、高卒たちは銭湯通いをしていたようでした。
銭湯に向かう大卒&巨漢。
到着すると、既に何人かの高卒が到着していました。
あ、修さんたちも来たの?
いぇ~い一緒に入りましょう~。
みんなでゆったり湯船に浸かります。
菅生さんたち、班長の役目大変そうですね~。
あぁ、まぁ・・・
キスマークの野郎、超うぜぇ。あいつがチームワーク乱してやがる。
まぁそう言うなよ・・・みんな慣れない環境で苦労してんだ。(いいぞ、もっと言え)
いやぁ~修さん流石大人だわ~。一番疲れてそうな修さんにおすすめの湯船があるよ。ほら、そこ。
ん?ここがそんなに良いのか?どれどれ・・・ぎゃあああああ
だーっはっはっはっ!そこ電気風呂だよ修さん
ドジだなぁ~菅生さん。
こんな感じの銭湯通いが、
寮の風呂が直るまでの期間続きました。
もともと温泉巡りとかが好きな菅生にとって、
同期との銭湯通いは楽しかったです。
さっぱりして寮に戻ります。
みんな研修で疲れ切っているので、
各自それぞれのスペースでゆっくり・・・しません。
ついこの間まで学生だった連中が一緒に寝泊まりしているのです、
夜はもちろんドンチャン騒ぎです。
大卒たちが使う畳6帖のスペースにこれでもかと群がる高卒たち。
何でわざわざこんな狭いとこに来るんだ。
もう時刻は0時を回っているというのに、
深夜3時過ぎまで続く大富豪&UNO
翌日に研修があろうとおかまいなしです。
研修期間にはろくでもないことばかり続きましたが、
同期との寮生活は楽しかったです。
きつい研修のあとも、みんなで寮に帰ってワイワイやっていたからこそ、
なんとか耐えられたのかもしれません。
まぁ、家賃をドブに捨てている事実を忘れたことはありませんが。
しかし入社から約2週間、早くも同期が一人辞める
口で言ってわからねぇなら身体で覚えろや!
口で言ってわからねぇなら身体で覚えろや!
よし、10分間の休憩とする。
休憩時間のトイレにて、E班の班長に話しかけられました。
修ちゃん、ちょっといい・・・?
ん?どうしたの?
実は・・・うちの班の高卒Zが辞めることになったよ。
ええ!?まだ2週間なのに・・・
僕もさっき総務人事課長から聞いたんだけど、一昨日くらいに相談して、今朝辞めることが決定したみたい。だからもう、いまから地元に帰るってさ。
入社からわずか2週間。
早くも同期が一人減ることになりました。
E班長から聞いた話によると、経緯は以下の通りでした。
総務人事課長、僕辞めます。
急にどうした。悩みがあるなら聞くぞ。
いえ、もう決めたんです。
一方的に辞めると言われても、こちらとしてもはいそうですかとは言えないぞ。もう社会人なんだから、まずは理由をちゃんとわかりやすく説明しなさい。
A社の研修を受けているうちに・・・
・・・?
自分が何をしているのかよくわからなくなりました。
総務人事課長ご希望の通り、わかりやすく説明してくれました。
これ以上シンプルかつストレートな説明は無いでしょう。
今日辞めていく高卒Zは、
一人前の料理人になって、おいしい料理を提供できるようになりたい、
という夢をもってA社に入社したんだと、寮で話してくれました。
それなのに、毎日のように怒声をあげる研修をしているのですから、
夢と現実のギャップにアイデンティティ崩壊を起こすのも無理はありません。
しかも、高卒Zは全体の怒声研修の際「声が小さい」という理由で、
他の新卒がロープレ等の研修をしている際などに、部屋の隅で一人
いらっしゃいませぇ!
と声出しさせられていました。
辞めたい理由を話しなさいと言う総務人事課長、
聞かなきゃわからなかったのかな?
総務人事課長の説得もむなしく、
このまま高卒Zは去ることになりました。
そしてこの日を最後に、菅生はもう高卒Zに会うことはありませんでした・・・
嬉しい初任給!その金額は・・・
高卒Zが辞めるという悲しい出来事が起こったと同時に、
嬉しい出来事もありました。
そう、初任給です!
初任給が振り込まれているはずなので、各自確認しておくように。明細は今から渡す。
初任給に大はしゃぎの高卒たち。
まだ通帳も明細も見ていないのに、皆なにを買おうと騒ぎ始めます。
お前ら、買い物は計画的にな。
しかし、菅生は違和感がありました。
隣のB班長の顔を見ると、同じように不思議そうな顔。
というのも、いまは4月。
A社の給与支給サイクルって当月締め翌月払いじゃなかったっけ?
と、思った瞬間、気づきました。そして初任給の金額も想像がつきました。
はい菅生、明細。
明細を受け取り、こっそり中身をチェックします。
記載されていた初任給の金額は
約6,000円
やっぱり。
連日の研修でもう忘れていましたが、
菅生たちは3月31日から出社していました。
つまりこの初任給は一日分。
友人より一日早く社会人になったことで、
一か月早く初任給を受け取ることが出来たわけです。6,000円だけど。
まぁでも、それは仕方ないので、
今夜はちょっと良いもんでも食べようかな~と思っていると、
周囲から悲鳴が。
えええ~なんでこんなちょっとなの~?
う、噓やろ・・・求人に載ってた金額と全然ちゃう・・・
す、菅生さん・・・やっぱりお金がありません・・・
どうやら高卒たちはいきなり満額もらえると思っていたらしく、
阿鼻叫喚の嵐。まるでカイジの地下帝国です。
菅生の班の連中はまだマシなほうで、
E班の高卒には満額の給料をあてにしてカード決済でPCを買ってた猛者もいました。
こいつ信用情報ブラック入りするぞ。勤め先もブラックだけど。
落ち着けお前ら・・・!今回の給料はな・・・
総務人事課長からこの小銭の説明がなされました。
やはり、3月31日の1日分の給料が入ったようです。
初任給って普通20万円前後入ったりするので、
新社会人にとって結構感動したりするらしいのですが、
菅生たちの場合、周囲より1日早く就職という仕打ちを受け、
かつ初任給の感動まで奪われるという、
世間一般の常識からはるか遠くへ追いやられました。
初任給の用途、強制決定
初任給が数千円で、全体的にどんよりムードの中、
総務人事課長がさらにたたみかけます。
みんな、数千円だけど初任給が入っているな。というわけで、いまから伊勢丹に行くぞ。その初任給を使って、親へのプレゼントを購入し、手紙を添えて送るんだ。
初任給から親への恩返しの品を買う、
というのはよく聞く話ですが、この数千円の初任給から?
ていうか会社がそれを強制するのはどうなの。
しかも、女の子たちなどは、既にお礼の手紙を送っていたそうです。
入社式の際に親からの手紙を読み上げ感動の涙を流した女の子たち、
その翌日すぐに、お礼の気持ちのこもった手紙を書き、
人によっては電話までしたと。
そのような状況で強制プレゼントイベントの開催。
流石は総務人事課長、後だしのセンスが光ります。
というわけで、全員で伊勢丹に向かいます。
ていうか、伊勢丹って新社会人が買い物するような場所でもない気がするのですが。
ましてや数千円の初任給で。
予算的に買えるものがだいぶ限られましたが、
菅生はアロマランプを買うことにしました。
アロマオイルとセットで、確か4,000円くらい。
初任給の2/3が飛びました。さよなら豪華なディナー・・・
社会人生活10年目で改めて感じる、何の役にも立たない研修
入社から1か月、新入社員研修の話を記載いたしました。
菅生は現在33歳、早くも社会人生活10年目になります。
つまり、これまで記載してきた新入社員研修ももう10年前のことですが、
いま振り返ると、まぁ役に立たない研修だったなという感覚です。
言うまでもありませんが、
現在職場で怒声を張り上げる機会はありません。
つまり空気が震えるレベルの発声は結果的に不要でした。
社長の暴言語録も、A社を離れてしまった今はもう全く意味はありません。
むしろ、職場では汚い言葉は慎むべきです。
A社のようなブラック企業に入ってしまうと、
このような無駄な研修に時間を費やしてしまう可能性があります。
そして、社会人の第一歩である新卒研修というのは、大事な時間です。
一度しかない大事な時間を無駄にしないよう、
就職活動は周囲に相談しながら、慎重に行いましょう。
自分が何をしているのかよくわからなくなりました、などと言わずに済むように・・・
【ブラック企業入社半年、1日15時間労働~過酷なOJT~】につづく
【ブラック企業シリーズまとめ記事です。】
【若いうちから投資の勉強をすると差がつきます。】
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